バングラデシュの医療保健セクターでは、「保険制度の未整備」、「非感染性疾患の増加」、「医療資源不足」の3点が課題に挙げられている。一つ目の「保険制度の未整備」に関しては、バングラデシュには公的医療保険制度はなく、現地政府は、2032年までにUHC(Universal Health Coverage;ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)を導入することを掲げているものの、2014年時点では、医療費の個人負担割合は67%と非常に大きい(世界平均は約18%)。また、民間企業が提供する医療保険は存在するものの、高額であるため低所得者層による利用は難しい。二 つ目の課題の「非感染性疾患の増加」に関しては、バングラデシュは結核高負担国かつ多剤耐性結核高負担国に指定されており、継続的、効率的な取組が必要な状況である。しかし、近年、それに加えて特に都市部において食生活や生活習慣に起因する心臓病、糖尿病などの非感染性疾患の増加による疾病構造の変化が深刻な課題となっている。また、同国の主要工業である繊維産業の工場労働者は、綿肺や結核などの発症や長時間労働に伴う健康リスクが高く、疾病の早期発見、雇用主による労働環境の改善による生産性向上が求められている。三つ目の「医療資源不足」に関しては、医師は人口1,000人あたり約0.4人(日本では2.4人)であり、特に農村部における医療人材不足が課題となっている。また、医療設備が比較的整った公立病院は都市部に集中しており、農村部の患者・健診者が一次的にアクセス可能な医療機関は医療設備が非常に不足している。
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