これまで述べたように、がん治療費はインド国民にとって大きな経済的負担となるものである。高額のがん治療費負担を軽減し、多くのがん患者が治療を受けられるようにするためには、医療保険制度の整備が望まれる。2010年時点でインドにおいて何らかの医療保険に加入していた人の割合は25%に過ぎず、全人口13億人のうち9億人以上が無保険者であったと言える。保険の区分については、保険加入者の約8割以上が公的保険の加入者であり、残りが民間保険の加入者となっていた。このような状況に対して、インド政府も保険加入率を高めるための取組みを進めている。具体的には、2004年に設置された「マクロ経済と保健に関する国家委員会(National Commission on Macroeconomics and Health)」が、政府系及び民間病院における診療を対象とした国民皆保険制度の導入を提言している。これをうけて2007年以降、政府・州政府による公的医療保険制度が複数整備されている。これら公的医療保険制度のなかで、最も広範囲の人口をカバーするものは2008年に開始されたRashtriya Swasthya Bima Yojana(RSBY)である。RSBYは約3億5,000万人の貧困層を対象とした保険制度であり、2014年時点で3,700万世帯が加入している。加入者数は明らかではないが、1世帯につき5人までが対象となるため、加入人口は最大で1億8,500万人と推定される。受診できる医療施設に公・民の垣根はなく、契約病院の中から患者の希望次第である。RSBYのがん関連保険給付金額を図表2-14に示す。
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